狩衣(かりぎぬ)

狩衣

狩衣(かりぎぬ)とは、もともと狩の時に着た服です。活動的で、動きやすいため、貴族の日常着となりました。烏帽子をかぶり、紅の単を着て、指貫袴をはき、狩衣を着ます。

 王朝時代の公家の代表的な娯楽のひとつの鷹狩りの時に、活動的で、気楽な服として着た装束です。「布衣」などともいわれました。身幅が一幅で両脇を縫わず、前の袖付けも縫わず、背で20センチほど袖を縫ってあるだけです。袖口に括紐をとおしてあります。藤原期より機能性に富み若年の日常着として貴族社会の中で広く利用されるようになりました。

 伊勢物語(10世紀中頃)に、「むかし、男、初冠して、奈良の京春日の里に、しるよしして、狩にいにけり。・・・・・男の着たりける狩衣の裾をきりて、歌を書きやる。その男、信夫摺の狩衣をなむ着たりける。」とあり、そのことを知ることができます。

 平安初期には麻布製で摺りで模様をあらわしていた狩衣が、美しい絹織物で仕立てられるようになり、公家服飾として成立しました。

 源氏物語の夕顔の条に、身分を隠して夕顔のもとにかよう光源氏の姿が「やつれたる 狩の御衣をたてまつり さまをかへ」と記されております。また末摘花の条に、「・・・頭中将なりけり。この夕つ方、内裏よりもろともにまかでたまひける。やがて大殿にも寄らず、あとにつきてうかがひけり。あやしき馬に、狩衣姿のないがしろにて来ければ・・・・」とあり、高級貴族のお忍び歩きの無造作な狩衣姿を描いています。

狩衣 狩衣
狩衣 狩衣
狩衣 狩衣
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十二単を始めとする平安装束を体験して、当時の生活に思いを馳せる、そんな京都の思い出づくり