直衣(のうし)

直衣

直衣(のうし)とは平安時代のエリート貴族の平常服です。源氏物語の光源氏などの姿。私邸でのくつろいだ時は烏帽子をかぶります。紅の単を下に着て、指貫袴をはき、白の袍を着ます。衿は平安時代風に盤領(あげくび)に仕立てております。

 直は、常なりといわれ常着の意味です。この衣服は公卿の常着ではありますが、一般の公卿が誰でも着られる衣ではなく、天皇の勅許がないと着ることができませんでした。天皇のよほどの信任の篤い人、身分の高い人に限り宣旨をたまわって始めてその日から宮中への出仕に着られるのです。

 直衣の色目はさまざまでした。源氏物語のころは、紅色など随意に用いましたが、平安末期から、冬は表白綾となり、夏は二藍(ふたあい)のこめ織となりました。

 文様も冬は臥蝶、夏は三重襷を用いられました。下に袙を着て、袴は指貫です。指貫は八幅仕立てのたっぷりした丈の長い袴の裾の部分を紐でくくり、大きくふくらみを持たせるように着付けます。

 持物は扇です。烏帽子をかぶるのが普通ですが、天皇の許しがあると「直衣始」という儀式を行い冠をつけて宮中に参内でき、「冠直衣」と呼び、家庭内での「烏帽子直衣」と区別しました。普通は素足で、しとうず(足袋)は、はきません。

 枕草子20段、清涼殿の・・・の条に、「・・・大納言殿、桜の直衣のすこしなよらかなるに、濃き紫の指貫、白き御衣ども、うへに濃き綾の、いとあざやかなるを出して・・・・」とあり表地が白、裏地が赤、または濃き紫の「桜重」の直衣を着て濃き紫色の指貫袴であったことがうかがえます。これは21さいの大納言藤原伊周(これちか)のすがたをしるしたものです。

直衣
直衣
直衣 直衣
直衣 直衣

十二単を始めとする平安装束を体験して、当時の生活に思いを馳せる、そんな京都の思い出づくり